第51章 独りの行方
ようやく、起き上がった5日目の昼。
「きつめに締めたぞ。呼吸は出来るか」
瑠璃は首を縦に頷いた。
二の腕、肩、背中、腿、ほぼ全身に打身に効く薬を塗布され、包帯を巻かれた。
額にも薬を塗布され包帯を巻かれた。
化膿しかけていた胸部の切り傷も軟膏を塗られ、
仕上げに、折れているだろうと予想される肋骨も、固定の為キツく締め上げられた。
その間、苦痛に耐える意外は一度も表情を変えなかった。
「お前は、俺達とは違うであろうに…」
「?」
「女らしくない」
全裸で手当をしてもらって恥じらいはないのかと、と言いたいのだ。
(恥ずかしがったら困るクセに…)
「何だ」
「いえ…」
平素、聞いたら、乾いた笑いを溢してしまいそうだったが、今、瑠璃には笑う余裕も論する気力もなく、素気なく首を振った。
「横になれ」
「いえ…このまま……謙信様…
突然、申し訳ございません…」
「突然は、美弥で慣れた」
「…どうか、政宗に、援軍を……後生にございます…」
「後生?貴様の命を寄越すとでも?」
瑠璃の言葉に謙信が失笑した。