第51章 独りの行方
着ているのは擦り切れ穴が開きそうな着古した着物。
青白く痩せ、額は青い瘤で腫れた顔。
見窄らしい成りの瑠璃が何と言ったとしても、なかなか通らない。
「瑠璃が、参ったとだけでも…」
もう、一刻もこうして、門の前の冷たい石の上に正座をし、平伏している女に、門番達も弱りきっていた。
もう、平伏しているとも言えない、
苦しさに横になっているのと変わらない体勢の瑠璃。
それからまた一刻半過ぎて、ついに
「……おい、お前、行ってこい、
どうせ、断られるだろうが、このままでは寝覚めが悪い」
門番の1人が「此処で死なれては困る」と思ったのだ。
それにつられたもう1人の門番。
「…わかった」
門番達が根負けした形になった。
「…どうか……れを持って…お願いします…」
瑠璃は懐剣を取り出し掲げるが、
腕を高く上げる力も残っていない。
震える全てで懐剣を探り出すと、掌に乗せる。
「刃物を差し出すとは、そんな成りでも礼儀は出来てるんだだな」
門番達は嘲言を吐いて瑠璃を見下げた。
「……は…はー…はー……」
もう、息をするだけで意識が飛びそうだった。
けれど、
瑠璃は胸の辺りを押さえ、苦しい呼吸に鬼の様な集中力と執念だけで蹲(うずくま)ったたままなんとか意識を保っていた。