第51章 独りの行方
瑠璃は汚れた着物を着て、川沿いを馬に揺られていた。
打ち身だらけの身体を無理に動かしたためだろう、発熱しているようだった。
「コレで…着物と馬を私に、下さい」
瑠璃は初めて政宗に買ってもらった大切な鼈甲の簪をアキとハルの両親に差し出していた。
悪い人ではないのだ、解っている。
ただ、この人達にも生活がある。
だから、タミは出てってくれ、と言ったのだ。
解っているから、「もう少し良くなるまで…」の一言が言えなかった。
「アンタ…」
「今、私には…これしか……せん。
お金に…換え……は、手間でしょうが…」
肌身離さず持っていて、金目の物はコレしかなかった。
「大切な物だろう?」
主人、アキとハルの父親が困った顔をした。
「…助けていただいたうえ…大切な…馬を…下さいと…無理を…言うのです…これくらい……
大切な物を代価にしなくて…どうしろ、と…言うのです…」
瑠璃の満身創痍の身体は、まだ、話をするのも、キツい。
身体中が脈打っているような感覚。
喋るたびに頭がガンガンする。
それでも瑠璃は無理を押して声をだす。