第51章 独りの行方
耳を疑った。
「は?」
「ですから、刀を収めよと…」
「ばっか言ってんじゃねぇよ」
「いえ、私が言っているのでは……」
「黙らないなら、お前も切る、と伝えろ」
戦場の緊張感、高揚、そして喪失感に睡眠不足が続く政宗は酷く苛立った様な、それでいて無気力な様な声音で言った。
「政宗様っ!」
投げやりな答えに聞こえた家臣が、諌める声を上げる。
「きちんとお考え下さい!」
「考えてるさ。全滅しかない」
ギラギラと闘志を宿した瞳で、戦いの先を見る。
「兄弟だろうが、母だろうが、叔父上であろうが、俺の前を行くなら斬るまでだ」
そう、それが闘神政宗の倫理だ。
もたらされ、政宗が耳を疑った言葉というのは、
「義姫様が、刀を収め、和睦を望む」と書かれた書状だったのだ。
(瑠璃も失った。
ここで、和睦なんて、冗談じゃねぇ!)
一騎当千、全軍撃破、売られた喧嘩は倍返しの政宗だ。
筆を取ると、スルスルと何かを書くと使いの者に直接政宗が渡す。
「母上には、死を覚悟されよ、と伝えろ」
見斬られる程の眼差し。
幼名梵天丸は今、武勇帝釈天ではない。
破壊と闘神の阿修羅だった。