第51章 独りの行方
死ぬんだ…と思った。
(生きてる…私…)
川に落ちて助かった事が奇跡だと思った。
「あ…とぅ…ご、ざい…ま…。
ど…くら……寝て……か?」
上手く声が出ない。
息苦しい。
(打ち身のせい?)
背中、脇腹を酷く打ち付けながら崖を落ちた身体は何処が折れたりしていてもおかしくはない。
「5日くらいだよ。
アンタ……何処ぞのお姫様だろ?」
「…ぇ…」
瑠璃は驚いた顔でタミを見た。
話をしてくれているのはタミ。
男の子はアキ、九つ。秋の生まれだからだそうだ。
女の子はハル、四つ。春の生まれだという。
主人である父親は川魚を獲り、獣を狩っていると言う。
「…上流の方で城攻めが有ったって聞いてる…アンタ…追われてんのかい?」
言いにくそうに、視線を逸らされる。
敗者を匿ったのが知れれば罰を受ける。
「……ぃぇ…わた「悪いけど、早いとこ出てってちょうだいよ」」
瑠璃の言葉を聞き終わらないうちに、
タミは、出て行け と言った。