第50章 前方の敵
瑠璃は傷付いて息絶えた兵士を見ながら、引き摺られるように炎の中を、からまりそうな足でなんとか歩いていた。
「早く歩け!」
「義隆様っ、抜け道へ」
抜け道の地下道を掘ってあった。
「義隆様、その女は棄てて行かれては…」
弱っていて早く歩けない者は邪魔だ。
「ならん、足手纏いだが、外で待ち構えている奴の致命傷だっ」
もし、外で伊達軍が待ち構えているなら
瑠璃を盾に命を繋ぐつもりなのだ。
火の勢いが強まる。
石垣の内側はきっと何処に逃げても阿鼻叫喚だろう。
助けを求める声が聴こえる。
(早く出て来いーー……)
柄に掛けた手に力を込める。
「政宗様…」
小十郎が小走りにやって来て、耳打ちする。
「そうか。
お前は此処の指揮を取れ。
暫くしたら門を破って生きている兵を捕獲しろ」
「承知しました。しかし、政宗様は一人で大丈夫ですか?」
「小十郎、誰に何を言っているんだ?」
政宗は小十郎に、ギラっと刺す様な眼に失笑を残して隊列を離れて行った。