第50章 前方の敵
「だからだ。
瑠璃を盾に、必ず出てくる!」
どこにそんな確証があるのか、
野生の感だとでも言うのだろうか。
けれども政宗は絶対を突き付ける。
「でも、もし、出てこなければ。
もし、瑠璃様を道連れにされたなら」
「その時は…、俺が中へ行く」
迷いなき覚悟の一言。
「⁉︎」
「だから、速く火を掛けろ」
家来は言葉を失くして、背を向けた。
(必ず助ける。だから、待ってろ)
きな臭い匂い。
火をかけられたと気付いた砦内はあっという間に統率を失う。
「火だ!」
「裏手からだ!」
「表へ逃げろっ!」
「表は包囲されてる!」
逃げても生きて出れる出口などない。
皆、絶望を知っている。
それでも、何とかしようと、荷車を足場に城壁をよじ登る兵士は、
頭ひとつ出た瞬間、多くの矢の的となり、再び内側に戻ってくる。
人形が落ちてくるように、ボトボトと…。
藁人形の頭に矢が刺さっているみたいに、
兵士はすぐに力尽きる。
命も尽きる。