第49章 後方の敵
瑠璃が攫われた翌日、
前日の戦場はもぬけの殻だと兵士が伝えに来た。
「夜の間に退却したか…」
「我々が押していましたのに、残念です」
「けっ、臆病風に吹かれたんだろうが」
今日、決着をつけるつもりだった伊達軍は肩透かしを喰らったことになる。
口々に愚痴を溢しつつも、今後の事を話し合っていると、
「政宗様っ!首が届いております‼︎」
慌しい声と共に兵士がひとり、転がり込んで来た。
「首だと?誰のだ」
政宗の蒼い瞳が暗凛と輝く。
(首なんて届くはずが…こっちの忍が殺されたのか?……)
投げ込まれたであろう風呂敷は赤黒く血に染みていた。
開いてみれば
「誰だ」
知らない男だった。
「あ…兄貴‼︎」
遠巻きに見ていた男の1人が声を上げた。
政宗が声の方を確認すれば、それは、
昨日捕らえた野良猫の1人だった。
「瑠璃を連れて行った奴か?」
政宗の問いに男はグズグズと泣きながら頷く。
実の兄ではないが、兄と慕っていた者だと言う。
血に濡れた書状が付属していた。