第49章 後方の敵
「いっ……い……いったらっ!
…こっ、こっ、殺すんだろ⁉︎」
震える声を絞り出し、縛られた男が震えながら問う。
「殺して欲しければ殺す。
が、恩赦を受けたいなら希望を訊いてやらなくもない」
「政宗様っ!」
側近が嗜める。
「貧困は悪しきを呼ぶ。
お前が金の為にそうしたなら、喰うに困らないようにしてやる。
伊達家に仕えろ」
見た目は悪いが、自分と変わらないくらいの歳だろう。
貧困に未来を閉ざしたとしたら、
(悲しい…)
縛られた男2人が顔を上げた。
驚き唖然とした表情で政宗を見上げる。
「…武士ってのは…殺せば終わりじゃねぇのか?
気に入らなければ殺すんじゃねぇのかよ…」
罵りなじるのかと思っていたが、涙を溢した。
「…そういう奴等は多い…否定は出来ない。
が、俺の領地ではそんな奴等は出していないつもりだ」
絶対的誇りをかけて言い切る政宗の蒼い瞳は澄んで清らかだ。
「もし、そんな奴等がいたなら、俺が其奴を処分する」
「…アンタ……何なんだよ…っくっ…」
「俺ら…この辺の村…焼かれちまって……喰うもんも…」
涙ながらに話す男に、政宗は刀を仕舞うと、
「お前達に辛い思いさせて、すまない」
と言った。
そんなやり取りの末、男2人は金を掴ませた首謀者の名前を明かした。
男達は伊達に仕えるかどうかさておき、
他の兵士と共に夕飯を美味そうに喰らい、
横になったのだった。