第48章 戦前月喰らうーR18ー
(生きてる音…俺は温かいか?)
引き寄せられた。
重なった胸からトクッ、トクッと音がする。
心の臓の音だ。
人の軀は温かい。
(離れてるから駄目だって…?)
冷えた軀は死を連想させる。
「…くっ付いて、シよ?」
瑠璃らしくない、情事の最中らしくない程、ひどく幼いく拙い言い草に、政宗は気持ちが温(ぬる)くなるのを感じた。
(自分勝手したって、何も感じない事、
知っていたはずなのに…)
人を斬る事、戦になる事を考えると
(俺は、人を失くし獣になるんだ……)
はぁ…と政宗は息を吐いた。
「お前は、いつも、俺を取り戻させてくれるな…」
「その為に政宗は私を喰らうんやないですか」
さっきまで苦しげに涙声で喘いでいたのに、
瑠璃の声は今は何でもない事みたいに笑っている。
「人虎伝の獣は月に慟哭し泣いたそうです…
喰ってしまった事を悔悲して……。
政宗は…心を取り戻すから、泣かなくていいですよ」
「…瑠璃…ありがとな」