第46章 道中
三河を越え、駿河の国に来た。
「瑠璃、久能寺浦から船に乗ろうと思う」
馬を休ませている時、政宗が言った。
「箱根越えは時間がかかる」
「分かりました。
馬で辛いより、船で辛い方が……どっちもどっちやなぁ」
苦笑する瑠璃に政宗の表情が少々曇る。
「いややわ、政宗。そんな顔せんといて?」
政宗の頬を挟んで瑠璃が顔を上げさせる。
「私は政宗について行くって決めてるから、
政宗の好きにしたらいいんですよ」
(私は政宗の足枷にはなりとぉない)
「政宗の思う様にして、私を振り回して」
「…瑠璃……」
(『私はそんなに弱くない』か…)
いつか言っていた言葉を政宗は思い出す。
「俺の小姓は頼もしいな」
ククク。
モヤモヤした何かが吹っ切れたような政宗。
ようやく本調子が戻って来た。
「ついて来れなくなりそうなら、早めに言えよ」
意地悪に笑った。