第46章 道中
政宗がどうしたのかと思っていると、
抱きしめた軀が、更に温かくなるのを感じた。
(照れてんのか…)
「瑠璃」
政宗は後ろから瑠璃の顎を掬って、クイッと振り向かせる。
と、瑠璃の銀鼠色の瞳とかち合う。
「⁉︎ んっ…ん…チュ…」
軽く触れて離れる唇。
「可愛いな」
(俺を気遣って、何とかしようと言葉をくれて、照れた様子も、それに)
「その恥じらう様子…俺の好物だ」
クククク…
「政宗ったら…真面目な話してたのに…」
瑠璃が困った様に呆れる。が、政宗は愉しげに蒼い瞳で瑠璃を見下ろす。
「してたな…
でも、ソレと、お前が可愛いのは別だろ。
可愛いお前がぜーんぶ悪い」
「そんな屁理屈、ズルいっ」
それ以上言い返す言葉も見つからなくて、
もう、主張している政宗のソレに気付いてしまって、瑠璃はどうする事も出来なかった。
瑠璃は政宗に横抱きにされ湯を出た。
脱衣所の簀子の上に降ろされても、脚に力が入らず、フニャフニャと座りこんでしまった。
「瑠璃、大丈夫か?」
「…ん…ちょっと休めば大丈夫やと思います…」
まだ色香の残る笑顔を見せる瑠璃。
健気だと思いつつ、政宗はひとり、喉を鳴らしてしまった。
これからの道中、まだまだ色々な事がありそうだった。