第44章 足音
唇が触れた、と思ったら、
後ろ頭を押さえられ、唇がグッと押し当てられた。
「ンッ」
驚いた瑠璃は力任せに腕を突っ張る。
が、びくともしなかった。
頭と背中に手を当てられ、
ガッチリ押さえ込まれている。
「…チュ…ん…よし、
今度そこ、じゃーな♪」
「〜〜ッッ、次逢(お)うたら弓矢の的にしたるんやからっ」
「ぜーんぶ躱してやるぜ」
京なまりで元就に食ってかかった瑠璃に対して
顔だけちょっと振り返った元就は手をヒラヒラさせ笑いながら歩き去った。
「…………」
「…………」
美弥はさっきの件について尋ねたくてウズウズしながらも、黙って瑠璃の横に並んで歩いていた。
何やら、問い出せる雰囲気ではないのだ。
(瑠璃さん、あんな事したあの人に怒ってるのかな)
あんな事。
そう、突然のキス。
美弥は自分の事でもないのに飛び上がりそうに驚いたのだから、瑠璃が怒っていてもおかしくないだろう。