第44章 足音
「まぁ、商売の下見、って処だな」
「そうなんですか‼︎
なんの商売ですか?」
「お前さん達の為の南蛮装飾品から大砲まで色々だ」
(大砲……信長様の膝元の安土に?
大名に売るの?何故?)
瑠璃は静かに、元就と楽しそうに喋る美弥の話を聴いていた。
が、胸中穏やかではなかった。
「瑠璃、久しぶりに会えて良かったぜ」
元就が裏も表も探らせない、いつもの愉しげな笑顔を瑠璃に向けた。
「また会えますよ、って言いましたからね」
((でも、会わないほうが良かったかも))
「何があっても、恨みっこなしだぜ?」
「こんな世ですからね」
お互い爽やかに笑って挨拶をした。
(今日の友は明日の敵…か…)
寂しく悲しい世の中だと瑠璃は思った。
「おっと、もう一つ言うこと忘れてたぜ」
歩き出そうとした元就が忘れ物を思い出した風に振り返る。
その元就は、悪戯を思いついた政宗と同じような笑顔だった。
「松寿丸さん、忘れ物って?」
美弥が首を傾げて問う。
「お前のその唇は人を惑わす。
しっかり塞いどけよ」
「⁉︎」
「エッ、ぁぁーっっ‼︎」
瑠璃の代わりか、美弥が叫んだ。