第44章 足音
「安土城、壊れてただろ」
「随分前ですけど、良くご存知ですね⁉︎
突然、大砲の玉が飛んできて櫓とか塀が崩れたんですよ〜」
(西国に居るこの人が何故そんな小さな出来事知ってるの?)
元就と美弥の会話に瑠璃はジリっとした動悸を感じた。
「怪我人はなかったけど、修復工事に時間がかかってましたよ」
重要事項ではないが美弥はペラペラとよく話す。
「ふーん。
ところで、京の出の瑠璃がなんで安土に居んだ?」
笑われる。
見透かされる様に。
試される様に。
(何と返すべき?)
「…どうして…だと思いますか?」
澄んだ銀鼠色の瞳が、元就の深紅の瞳に挑む。
「さぁな」
元就も挑むような瞳で笑っている。
「で、お前はどうしてあの時俺の船に乗った?
俺を探るつもりだったか?」
「いいえ。探るつもりも、その必要も私にはありませんでしたから。
ただ、松寿丸様と海を行くのは楽しそうだと思ったからです」
「………」
至近距離で作り笑顔で睨み合う。
(え?何?何?)
美弥はキョトンと2人を見る。