第44章 足音
ヒタヒタと不穏な足音が近づいて来ていた。
気付かないで過ぎてくれれば良かった。
町中を美弥と歩いていた瑠璃。
何かに気づいて足を止めた。
「瑠璃さん?」
美弥のその声を無視して、威嚇する様に厳しい表情で黙って振り向いた。
「⁉︎⁉︎」
「おーっと、やっぱり嬢ちゃんだったか」
背後には簡単に手を引かれる程の距離に男が立っていて、
男は瑠璃の両肩を包む様に手で掴んだ。
そして、眼を丸くしていた男は、
親しみのある快活な笑顔を見せた。
「そうなんだ〜。
松寿丸さんとは福岡に行った時知り合ったんだ。
日に焼けてて海の男って感じだね〜」
話を聞いて警戒心のかけらもなく、美弥が楽しそうに相槌を打つ。
背後に立っていた元就に
「安土の美味いもんでも喰おうぜ。
教えてくれよ」
と言われ、美弥が案内した餅屋に来ていた。