第2章 政宗と姫の或る日 其の壱
些細な事なのに、自分の手の届く処に戻って来たんだ、と実感する。
そんな穏やかな時間が過ぎる、この頃。
「なぁ、瑠璃」
自分の用事を済ませ暇になった政宗は、
いつの間にか書物を読んでいる瑠璃の傍らへやって来て、
いつの間にか、瑠璃を自分の腕の中に囲い、背中まで伸びた緑髪を梳いたり、指に巻き付けたり、手遊びしていた。
「瑠璃」
「…ぅん……」
「なぁ」
「……はい」
「なぁ、って、言ってんだろ〜」
「あーっ!」
構って貰えない政宗が、痺れを切らして書物を取り上げた。
「実はお前も三成と同じなのか?」
「何がですか?」
「没頭すると周りを見なくなるのか、って事だ」
瑠璃に書物を返しながら政宗が拗ねている。