第2章 政宗と姫の或る日 其の壱
「あ、ごめんなさい。
切りの良い所までと思ってたから」
瑠璃がそっと書物を閉じて、政宗を見上げて微笑んだ。
微笑まれただけで、さっきまでのツマらなさは何処へやらだ。
「じゃぁ、今から目一杯、俺を構え」
「いいですよ。
政宗となら出来ることたくさんありますからね。
歌詠み、演奏、お茶、それから、料理も。
どれにしますか?」
うふふふ…と笑っているのはわざとだから。
「そーじゃないっ」
「知ってる」
(くそぉーっ)
こんな些細な事、本気で悔しがるのは、
何でも全力で楽しむ政宗だからだ。
瑠璃が可笑しそうに笑っている。