第43章 最近の姫の日常(R18)
琴、横笛、琵琶、鼓に合わせ引き滑る裾。
白拍手の舞から派生した芸妓舞。
扇子片手に舞うのは先程の遊女と瑠璃。
落とした腰つきは艶かしくも、
腕の振りは切れがあって清々しい。
(いつの間に……手弱女の仕草…)
流れる動線
風が見えるように緩やかに扇子が羽ばたく。
肩から腰を柔らかく捻り回る姿。
強く描かれた二重の線が、流睇を強くみせている。
そして、真っ赤な紅の唇が弧を描いて笑う。
(誘うような…)
政宗は覗き見ながら、ゴクッと喉を鳴らした。
(誰の為に……)
それ以上見たくも考えたくもなくて政宗はその場から気配を隠したまま立ち去った。
「どうでしたか?」
「瑠璃様はなんでも器用にこなはれますなぁ〜。綺麗でしたえ?」
「ほんまほんま、あっちゅうまに、覚えてしもうて…
踊りは完璧やね」
遊女達は瑠璃を褒めるが
「けど…」
「けど?」
「男をかどかわしたり、手玉にはとれへんなぁ〜〜」
「な〜。遊女には向いてへんなぁ〜」
「なんでやの?」
「だって、真面目やもん」
「だって、身が引けてたもん」
「……」
(鋭い…というか…駄目やな…)
知らない男性に近寄られたり、触られたりに嫌悪感を抱いた。
そして、それを受け流せなかった。
(…政宗のせいやわ……)
下心丸出しでは政宗だけにしか触られたくない。
そう思ってしまった瑠璃は、苦笑いしか出来なかった。
※手弱女…たおやめ/しなやかで美しい女性。