第40章 政宗、誕生日の噺ー前ー
『欲しい物ありますか?』
『お前の全部』
そんな会話をした記憶は確かにある。
(だからって…)
眼の前の瑠璃は、着物は着ている。
寝巻きを脱ぎ落としたら、裸か と思ったが、
違った。
けれど、
(コレはコレで……)
幅広の帯。
おそらく、美弥に何とか言って調達したのだろう。
躑躅色の沙羅と桃花色縮緬(ちりめん)を重ねて、
素肌の片肩から胴に巻きつけ、
胸の前で大きな蝶々を結んでいる。
くびれた白い細腰に小さな臍が見える。
臀部は、白い沙羅を地に、朱色の沙羅を重ね、
横前で同じく蝶々結びをしている。
見えそうで見えない透け具合、
丈は腿の真ん中辺りまでしかない。
(アイツらの時代の着物みたいだな…
なんだ?…んー…スカァト だっけ…)
「お前を贈ってくれるのか?」
政宗の眼が煌き、嫌虐の笑みを唇に乗せた。
「蝶々結びしてる着物は包み、ってことで、
俺が解いて良いんだよな〜」
解っていながら皆迄、口にする政宗に
瑠璃は恨めしい思いで眼を瞑っていた。