第40章 政宗、誕生日の噺ー前ー
「政宗、私先に湯浴みしていいですか?」
「一緒に入ればいいだろ」
「今日は、別にして?」
確信犯か、
照れた顔で眉をハの字にして、モジモジしなから上目遣いで見られる。
(う……)
「政宗への贈り物、用意するから、ねっ?」
あり得ないくらい可愛くお願いされた。
あえて、態々 そうやったのだとは解るが、
普段が素っ気ない瑠璃だから尚更。
一発撃破の破壊力だ。
「わ…分かった…」
小鳥みたいに小首を傾げて、
子猫が見上げるみたいに見つめられて
(最高に可愛い)
と思った。
それに、何をしてくれるんだろうと、期待と好奇心があったから、瑠璃のやりたい様にさせる事にした。
政宗が湯浴みから上がって部屋に戻っても瑠璃の姿はなかった。
(てっきり、先に待ってるんだと思ってたが…)
部屋には湯上り用の茶が高坏(たかつき)に用意してある。
(飲みながら待て、って事か)
政宗は高坏の前に腰を下ろした。
※高坏…食物を盛る、一本脚の膳の様な器。