第40章 政宗、誕生日の噺ー前ー
『お前の全部が欲しい』
それは、言葉通りだったのだが、
政宗が欲しっていたのは、
『本当のお前』
どうやったら心を開いてくれるかいつも考えていた。
健やかで伸びやかに見えて、
心の奥は複雑な瑠璃。
美弥みたいに天真爛漫に素直な心だったらどうだっただろうか。
こんなにも全てを知りたいとは思わなかっただろう。
手元に置いて、心の奥まで見たいとは思わなかっただろう。
直ぐに知れてしまう心は簡単だ。
『愛おしい』とは思うが、
自分の全てで庇護したいとは思わなかっただろう。
最近はあまり隠さなくなってきていたが、
まだ卑屈な言い方をする事のある瑠璃。
その心の蟠(わだかま)りや傷をもったまま
自ら一歩踏み込んできて欲しいと政宗は思っていた。
だから、『お前の全部が欲しい』と言った。
もう、長く一緒にいるのに、まだ距離を感じるのが、
とてももどかしく、寂しく思っていた昨今だったから。
政宗は心内、誕生日に何かある事を期待していた。