第40章 政宗、誕生日の噺ー前ー
「え?」
「光秀の匂いが移るような事でもしたのか?」
「光秀様の…匂いが…移るような事……」
考えながら小鈴のような声で反芻した。
「…どんな事?」
分からなかったようだ。
眼を丸くして小首を傾げる瑠璃を可愛いと思った。
(そうじゃないだろ、俺っ)
「抱き合ったりしたのかって聞いてんだ」
「なぁんだ、政宗、そんな事考えたんですか?
てっきり私は光秀様に鉄炮を使わせてもらった事、怒られるのかと思いましたよ」
クスクスと可笑しそうに肩をゆする。
「鉄炮?撃ったのか?」
「新しい短銃が手に入ったので撃ってみろと言われまして。
扱い方を知ってても悪くないでしよう」
光秀のような妖美な笑を見せて来た。
瞬刻前の『なぁんだ』はとても気を許している声音だった。
瑠璃の笑う様子もふわりと機嫌良さそうだったのに、一瞬にして、
狡智の妖しい雰囲気を纏う。