第38章 晴れの離宮
声はだんだん近づいて、息が耳を擽り、
唇が耳朶を掠めて、瑠璃は身体を震わせる。
「好きだぜ、瑠璃。
だから、なぁ…そろそろ顔 上げてくれよ」
そう頼まれると、瑠璃は何となく、上げずらい。
(上げねーのか、天邪鬼め…だったらーー)
「瑠璃、大好きだぜ。
もういい加減、顔、上げろ」
突然、いつもの命令口調になる政宗。
「……」
(ふーん、まだ抵抗するのか)
「顔、見せろって言ってんだ。
お前の顔見て言いたいんだよ、俺は」
もう一押しした政宗に、
瑠璃は、ようやく、ノロノロと顔を上げ、政宗を見た。
(お、やっぱりな)
何が、やっぱりって、瑠璃は政宗に命令されると弱いという事。
「大概 言ったけど、まだ機嫌直らないか、
瑠璃姫様?」
まだ、膨れっ面の瑠璃を覗き込んだ。