第38章 晴れの離宮
「そうだ。
お前以外に言い寄られても、迷惑なだけだ」
面食らうほどはっきりと断言され、
瑠璃はしばし唖然として
「………////」
ボッと火が点いたように顔を赤くした。
ククク…
「お前の顔、真っ赤。
そこの鶏冠草より赤いぞ」
庭の端に並んで咲く鶏冠草を指さし、
政宗が蒼い眼を細めて愛おしげに笑った。
「なぁ、もう、全部俺が悪いでいいから、
機嫌なおせよ」
政宗は瑠璃の肩を抱き、身体を寄せる。
自分の肩に凭れる形になった瑠璃を、
尚も引き寄せて、あっという間に胸に抱いた。
「…ズルい…ずるい、ずるい、狡いです!」
(そうやって、何となく絆してくんだからっっ)
『瑠璃〜…もう泣くなよ、なっ』
『泣くと不細工になるぞ?』
『可愛い顔台無しだな』
『よしよし、してやるから泣くなって』
屈託のない、明活、やんちゃな笑顔の政臣が頭を撫でて、抱きしめてくれた。
『ずるいっ、ズルいよ!政にぃのせいやのにっ』
胸に顔を埋めて抗議したけど、
なんとなく許してしまっていた幼い瑠璃。
(ずるいよ……)
幼い自分が思い出された。
※鶏冠草…けいかんそう。ケイトウの古い言い方。他にも韓藍とも。