第38章 晴れの離宮
新しく建てた離れは美弥の為だと認識していたが、それを瑠璃に貸したと言うのは
(気に入られてるってことだな)
気に入られないよりは良いが、
政宗的には複雑な気持ちだった。
(気が気じゃねぇ)
そんな心配無用の心配をした。
瑠璃を迎えに行ったが、
出てきたのはお夕だけだった。
しかも
「政宗様っ、私は先に戻って、滅茶苦茶らしい瑠璃様の部屋を片付けておきますっ。換気と掃除もっ」
まだ許せないらしい。
早口でそう言い置くと玄関を出て行った。
「なんだよー、お夕はまだ怒ってんのか…」
ポリポリと頭を掻きながら瑠璃の元へ向かう。
「瑠璃ー、帰ろうぜ」
「お夕が片付けるまでは帰りたくありません」
「ツンケンしてるなぁ、なんだ、お前もまだ怒ってるのかよ」
「いいえ、別に」
(別にって……)
怒ってはいない。
けれど、藤隆姫が御殿に居たのだと思うとどうにも気が進まないのだ。