第37章 憎悪の結末
『美しい花があるそうです。
瑠璃殿と一緒に摘みにいきたく筆をとりました。
すぐに出発致したく候』
「この文が瑠璃の処に届けられたのは曙鐘(しょしょう)鳴る前の早暁だったそうですよ。
先に誘って、棘のある花を摘ませたのはあの子です。
その日、玉瑛は城へ登らなかったから見に行ったんです。
瑠璃は手に沢山の擦り傷を負ってた。頬にも」
家康はあの日の事を話した。
「それに、この部屋から勝手に書物を持ち出し、三成の処に行って、瑠璃が読んでくれない、と泣き付いたそうですよ」
「勝手にって…」
政宗は家康の話をまだ信じられない。
「その書物は、三成くんが前に瑠璃さんに貸してた物だったって」
美弥が補足し、続ける。
「信長様には、瑠璃さんが『持って行け』って言ったって、葛切りを勝手に持って来たんだって、信長様が言ってたよ」
「…信長様に、食べ物を差し入れた?…」
(なんて事を…)
流石の政宗も青ざめた。