第37章 憎悪の結末
初めて見る藤隆姫の憎悪。
憎悪の眼。
(こんな表情…)
もしここに瑠璃がいたら、
(あの鋏で…)
滅多刺しにしそうな勢いの藤隆姫。
(瑠璃が居なくてよかった…)
狂気の様子の藤隆姫を見て、政宗は瑠璃がここに居ないことを安堵した。
なのに、
「なんとも酷い有様だな、政宗。
これでは俺の為の余興は当分無しと見える」
「…琴に罪はないはずですが……」
光秀の声がして政宗が見ると、後ろから瑠璃が覗いた。
「瑠璃っ」
一心不乱に琴に鋏を突き刺している藤隆姫が、
瑠璃と政宗の声に反応して顔を上げた。
「わたくしだって琴くらい弾けるわ!」
光秀に向けて藤隆姫は反抗の叫び。
「お前のような心の汚い者の琴の音など聴きたくない」
光秀は冷たい笑を浮かべて、藤隆姫を見据える。
(容赦無しやなぁ…)
瑠璃は心で苦笑いする。