第36章 嵐 天主へ寄る
(あ…)
家康を見ている瑠璃が政宗の目に映った。
矢を放ち残心に立つ瑠璃。
日が入り込もうとする陰の下、光を受けて瞳が輝いて見える。
何かを待つような雰囲気の瑠璃に、
家康は息を飲んだ。
(…君をーー……)
息が詰まるほど、尊くて、愛おしいモノ…
(抱きしめたいーー…)
愛情とか、
欲情とか、
慈尊、孤愁同心とか、そんなモノが全てごちゃ混ぜになった気持ち。
そして、その治りそうにない衝動。
(抱きしめたら…)
治る気がする。
その衝動に突き動かされないよう、
家康はグッと拳を握って耐える。
けれどーー……
「⁉︎」
家康は、耐えきれず、弓を持ったままの瑠璃を抱きしめていた。
「…ごめん…瑠璃…少し、少しだけ…
…何も、しないから…動かないで…」
抱きしめた瞬間、そう言っていた。