第36章 嵐 天主へ寄る
(家康のヤツーーっ、何やってんだっ)
政宗は道場の縦格子の外で唸っていた。
(瑠璃も瑠璃だろ。なんで素直に言う事聞いてんだよっ)
歯軋りする政宗の見る方向には尚も密着する2人の姿。
「最近 弓 引いてなかったよね。
姿勢確認するよ」
家康に言われた瑠璃は表情を引き締める。
(一瞬にして)
真剣な顔に変わる。
(入り込む隙もないくらい、厳しい)
肩を開き、脇を締め、顎を引いた正しい姿勢で静止する。
(そして、美しい)
以前にも思った。
(弓を引く君は、いつも真っ直ぐに咲く青い竜胆のようだ)
考えていると
ヒュッ と空気が鳴って、静寂と思案が途切れた。