第36章 嵐 天主へ寄る
その次の日は
「瑠璃、弓の鍛錬に付き合ってあげる」
と先に家康に手を取られた。
「家康っっ」
焦ったのか、傍に藤隆姫が居るにも拘らず、
政宗が慌てて家康を呼び止めた。
「…何ですか、政宗さん」
嫌そうに返事をする家康。
「俺も行くっ」
「政宗さんは弓 引かないじゃないですか。
来なくていいですよ。
行こう、瑠璃」
冷たく却下された政宗はムーッと口を噤んだ。
家康に腰を抱かれて歩いて行く瑠璃が、政宗をちょっと振り返った。
申し訳なさそうな瑠璃と眼があった政宗。
(瑠璃……)
「瑠璃」
「クッ…ふっ…ふふふふ……」
「瑠璃ってばっ」
笑いを堪えきれない瑠璃を家康が小声で諌めた。
瑠璃が政宗を振り返ったのは、わざと だった。