第36章 嵐 天主へ寄る
呆然とした後、
藤隆姫はなんとか声を出す。
「そ…それは…本当ですか…?」
「それ、とは……石を投げられる話かな」
「……」
姫がコクリと頷いた。
「とんだ箱入り姫君だ」
光秀がわざとらしく眼を丸くした。
「御館様ありがたや、と拝まれる者は
反対に恨む者も沢山居る。
どれ程 良い主君であろうと、良い事の為に虐げられ、貧困をあじわい、憎悪を燃やす者共も存在すると言うことだ」
「それは…明智様も…」
「俺も信長様もあるぞ。
石だけじゃない。
腐った果物、死んだ魚、蛙、蛇なども飛んで来たな。クククク」
光秀は思い出して、楽しい思い出のように語り笑う。
反対に藤隆姫はブルブルと震える。
「色々飛んできたが、砂が1番厄介だ。
目に入ると痛くて堪らないからな」
お手上げだど、小さく手を上げ、肩を竦め苦笑する光秀。
「お父様も……」
眉を下げ、哀痛の眼差しの藤隆姫は父を思った。
(だから、私を外に行かせてくれなかったの?)
「だからお前は箱入りなのだ」
(‼︎ やっぱりっ…)
泣きそうな藤隆姫を残して光秀はさっさとと立ち去ってしまった。