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《イケメン戦国》未来から来た戦国姫

第36章 嵐 天主へ寄る




「藤隆姫、瑠璃に頼まれたのか」
「いいえ、私が…」
「ほぉ、藤隆姫は気の利く良い姫であったのだな」
信長は天主での事も含めて揶揄っているのだ。
「と、とんでもございませんっ…恐れ入りますっ」
これ以上突かれたくない話。
青い顔の藤隆姫は、震えながら慌てて頭を下げた。
「さ、行くとするか」
「はい、信長様。
反物でも買って頂いて美弥さんに仕立ててもらおうかしら」
ニッコリと女らしい嬌笑をみせる。

そんな様子を政宗が眉間に皺を寄せ、
苦々しく見ていた。


歩き出す信長に続き、一歩踏み出した瑠璃が立ち止まる。
「藤隆姫様、帯の飾りが…」
と言って、帯びの玉飾りに手を伸ばす。

「泥棒猫は何処から来たのでしょうね。
私の物を着付けて、私に取って変わったおつもりですか?
ああ、御自分に自信がないのかしら?
コソコソと見苦しいだけですわ」
瑠璃はそっと囁いた。
藤隆姫の耳にしか届かない、震える程優しい声音で。


少し背の低い姫を見下ろす瑠璃は、
柔優な表情に穏やかな微笑みを湛えている。
唇も眼も笑っているのに、
瞳だけは刺切に姫を貫いていた。







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