第36章 嵐 天主へ寄る
玉瑛姿の瑠璃が離れに戻ると
「信長様?」
先に信長の姿があった事に驚いた。
「ここにずっと独りでは気も晴れぬであろう。着替えて来い」
瑠璃に戻った瑠璃は信長と一緒に歩く。
御殿に帰るのだろう政宗と藤隆姫が城庭を歩いていた。
「信長様、どちらへ」
政宗が信長を認めて、先に声を発した。
「なに、瑠璃が退屈そうなので、
城下にでも連れて行ってやろうと思うてな」
チラッと瑠璃に眼をやった。
「…藤隆姫様、
本日も麗しくていらっしゃいますね」
瑠璃は麗雅な笑みを湛えつつ、姫に挨拶をする。
「まあ」
瑠璃が頭を下げて挨拶をしたことに、
藤隆姫の自尊心は満更でもなさそうだ。
「藤隆姫、良い着物だな。政宗の見立てか?
瑠璃、貴様も同じ様な着物を持っておったであろう?」
「ええ、しかし、藤隆姫様の方が似合ってらっしゃいますわ」
瑠璃は妖艶と美しく笑うが、なんとも底知れない笑い方だった。
「ああ、それと、三成様に書物を返して頂いたとか。
私、御殿の部屋に置きっぱなしで出て来てしまい、気にしておりましたの。
ありがとうございます」
「…え、ええ」
政宗が眉を顰めた。