第36章 嵐 天主へ寄る
「…毒などは…入っておりません…
私はただ…「瑠璃を悪者にしたかった。客人に用事をことずけるとは何事だ!と俺が瑠璃を叱ればしめたもんだと思うたか」」
「………」
姫が肩を落とし項垂れた。
「戯けがっ!」
信長が掴んでいた腕を振り、
藤隆姫の軀ごと跳ね落とした。
「きゃぁ!」
膝のうえから押し落とされ、姫が畳に転がる。
「毒が入っていようがいまいが、
姑息であざとい女よ。
2度と天主に来ることは許さん。
出て行けっ」
ユラリと揺れて見えた殺気に、姫は声もなく、泣き出し、転げる様に退室した。
(女らしいやり方だな。どうする瑠璃?)
信長はひっくり返り転げ散らばった葛切りとその膳を見ながら、麗凛な瑠璃の顔を思い浮かべた。