第36章 嵐 天主へ寄る
恐怖に喉が乾いて藤隆姫は声が出ない。
「何を考えておる。
瑠璃を陥れてどうするつもりだ。
俺が瑠璃を疑い、追放でもすれば満足か?」
そう言いながら、信長は藤隆姫の腕をじわじわ、ギリギリと捻じる。
「…っいっ…あっ…」
「瑠璃は用事を他人には頼まぬ。
食べ物を持ってくる時は銀か銅の器と匙箸を用意してくる」
藤隆姫は痛みに瞑っていた眼を大きく開く。
真っ青だ。
「毒については十分に注意を払ってくれてな…。
貴様はどれも満たしておらぬ。
故、ここで俺が死ねば貴様が首謀者、犯人だ」
くくく…はっはははは
「お粗末過ぎて痛快だぞ、ははは…ククク」
(此処に来た時から、全部…)
浅はかだったと今頃気付く。