第35章 嵐 顕現
絶対的威厳を持って、
有無を言わせず、従わせる。
『言い訳も弁解もいりません』
『返事だけでよろしい』
澄んだ声だが、感情の無い声。
見るのも怖かった母の顔。
俯けば叱られる。
だから、背筋を伸ばし、前を向くしかなかった。
誤解されたまま、叱責を受けても、
口を噤んで過ぎ去るのを待つしかなかった。
「………」
瑠璃は口を噤んだまま、政宗を見据える。
「………」
一瞬、揺れた瞳はもうない。
睨みつけるほど強く、真っ直ぐ。
(私はっ……)
心の中で拳を握った。
「何だ、言いたい事があるなら言えよ」
政宗はそう言うが、
「言えよ」は「言うな」に近い。
(そう言う態度だっただろうか…。
確かに関わりたく無いと思ってはいるけれど…)
冷たくしたつもりはない。
冷たくするほど姫に会ってもない。
(…けれど、もし、態度に出ていたとしたら…)
歯痒く口惜しい気持ちもあるけれど、
瑠璃は其れ等を押し込めて
「……気をつけたいと思います…」
これからは、もっと気をつけねばならない、と思い、そう答えた。