第35章 嵐 顕現
(認めるのかよっ)
政宗は憤る。
(俺にはっ…俺はっ…)
政宗は瑠璃が「誤解は誤解」
「やってないならやってない」と、なんと言ってでも否定すると思っていた。
けれど、予想に反して瑠璃は
「気をつける」と言った。
それは瑠璃が、藤隆姫に冷たく当たった事を認めたのだと政宗は判断した。
「残念だぜ、玉瑛」
政宗のその一言に瑠璃は弾かれた様に肩を揺らした。
政宗はヒラリと馬に跨ると、
馬上から瑠璃を見下ろす。
「アイツは長く居るわけじゃない。
気に入らなくても、少々の事は我慢しろ」
と言って、馬を出発させ、行ってしまった。
瑠璃は呆然と立ち尽くしていた。
「我慢しろ」と言われたことより、
最初から決めつけられて、釈明の余地も与へられなかったことに、心が傷んだ。
ハァ……
「私が悪いのかーー…」
瑠璃は苦笑の共に乾いた声を天に向けて吐き出した。
政宗は手綱を強く握りしめて、天を仰いでいた。
(俺には言って欲しかった。
我が儘だろうと、屁理屈だろうと、
物分かりの良い子でいる必要なんて無いのにっ)
何度も言った。
事あるごとに。
それでも、我が儘も感情を表にする事もあまりない。
渋ったり、駄々を捏ねたり、人が皆、持っている良くない部分は見せない。
それを何と取るか。
(俺には見せられない。
まだ信用も、信頼もされてないって事だろっ)
そうではないと解っていても、
そうなんだと思ってしまう。
考えてしまう。
(ずっと一緒だって誓った。
何でも話せって言った。
なのにっ、俺にはまだ心を開かない…
…俺は一体、お前の何なんだ……)
完全にすれ違ってしまった。