第35章 嵐 顕現
そして、もう一つ三成が気になったのは、
ずっと信長の離れに滞在している瑠璃にどうやって書物を借りたのか、だった。
(あんな書物を離れに持って移るとは考え難い)
それに、藤隆姫が瑠璃に会う機会はほぼない。
(御殿に置いたまま離れに移った場合なら、
勝手に瑠璃様の部屋を探した、という事になりまが…)
それはそれで、やってはいけない事だろう。
疑問は疑惑へと変わる。
最初は政宗にだけくっついていた藤隆姫だったが、徐々に手法と範囲を広げ、瑠璃への嫌がらせとして顕著に現れているのを皆感じていた。
政宗については
嫌がらせを気付いていながら、
無関心を装っているのか、
本当に気付いていないのか、
判らない。
誰にも判らなかった。