第35章 嵐 顕現
「政宗さん!
そんなっ‼︎
瑠璃はっ、腹いせに仕返しするような娘じゃないでしょっ」
家康は慌て政宗を嗜める。が、
「家康ーー。
お前、何だってそんなに瑠璃の肩を持って、庇う様な事言うんだ」
政宗の眼がギラッと光った。
(庇うだなんて…)
政宗の瞳を厳しく見据える家康。
「瑠璃はもっと沢山のーー…っ」
言いかけて口を噤んだ。
(何をそんなに、苛立って…怒ってるんだ)
苛立ち、やり場のない怒りが揺れている。
(今の政宗さんに瑠璃を思う気持ちは見られない)
政宗は瑠璃が藤隆姫よりも沢山の傷を作っている事を知らない。
知らなくても、普段ならそんなに簡単に瑠璃を非難しないはずだ。
「…なら…どうします?
今の政宗さんからなら、瑠璃を奪っても良さそうですけど?」
挑発的な台詞。
家康の翠の瞳が強く、政宗を貫く。
「幼稚であからさまな嫌がらせなんて瑠璃はしませんよ。
それすら判らない様な人に
『瑠璃は俺のモノだ』なんて言って欲しくはありませんね」
「なっ……」
政宗が言葉を失う。
(もし、何かあって、全員が敵に回ったとしても、政宗さんだけは瑠璃の味方であるべきなのに….
それなのに、今は1番に瑠璃を悪者扱いだなんて…)
「見損ないましたよ、政宗さん」
家康は冷たい視線を投げると、その場を去った。