第35章 嵐 顕現
その日、その様子を折りを見て政宗に話そうとした家康だったが、切り出せなかった。
なぜなら、
先に政宗に話を切り出されたからだ。
「家康、今日、お前の処へ藤が薬を貰いに行ったんだってな」
「…あ…はい」
「その時何か聞いたか?」
「花の棘が刺さったから、と聞きましたが…
…違うんですか?」
(あの女は確かにそう言った)
政宗の口ぶりには違和感があった。
「瑠璃が藤に花を摘め、と言ったから仕方なく取りに入って傷が出来たそうだ」
政宗の不満そうな口調、それは
(瑠璃を責めてるのか)
家康にはそう思えた。
「瑠璃が?そんな事…」
「俺の処を追い出された腹いせに、
藤が傷を負うようにしたんだろ」
政宗は吐き捨てるような言い方をした。