第35章 嵐 顕現
少し残念に思いつつ近づくと、
「隣、座って良い?」
瑠璃の横を指差した。
「どうぞ」
「政宗さん、来ないの」
「はい」
「何で」
「藤隆姫がベッタリ張り付いてますし……
私の事はどうでも良いのではないですか?」
瑠璃は少し寂しげに自嘲した。
「ふぅ〜ん…あっそ」
家康は横目で憂う瑠璃を見た。
家康は気を取り直し、改めて切り出す。
「ねぇ、瑠璃」
「はい」
「ちょっと手、出して」
「はい」
細く白い指が書物から離れ、
真っ直ぐ、こちらに伸びて来る。
その手を、クイッと雑に掴めば、
「っつっ」と瑠璃が顔を顰めた。
見れば、手の甲、手首、その上辺りが擦り傷、切り傷だらけになっていた。
更に右手を強引に手に取ってみれば、
指先もたくさん小さく切れて、
切り傷で赤くなっていた。