第35章 嵐 顕現
(変だろ…おかしいだろ……
花の棘のあるなしなんて知ってるはずだ)
なのに藤隆姫は瑠璃の所為で棘が刺さった、と言った。
(あの女の事だ、無理矢理摘ませて、
刺さったフリでもしたんじゃないか…?)
あり得る事だと家康は思った。
家康は再び 襖を開いて部屋を出た。
(今日は玉瑛は登城していない、それは)
「瑠璃、いるんでしょ」
家康は瑠璃の滞在している離れにやって来ていた。
昼間の離れには瑠璃しか居ない。
庭から入ると、書物を読んでいる瑠璃がいた。
「家康様?」
声を上げ、驚いた顔で瑠璃が家康を見た。
(なんか、可愛い)
素の一瞬。
「ここに誰かが来るの、初めてです」
麗美な笑を見せた。
(もう、いつもの瑠璃だ)