第35章 嵐 顕現
秀吉から話を聞いた瑠璃は
「疑ってみるなら、美弥さんが部屋の状況をみて呆然としている所に、政務で行ったり来たりしている人ならまだしも、藤隆姫が偶然通り合わせるというのは、少々 不自然にも思えるところですね…」
挑むような美笑を貼り付けた瑠璃が続ける。
「私を悪者に仕立て上げようと、一声上げるには十分だと思ったのでしょう」
「だろうね。
気をつけなよ瑠璃」
家康が注意を促す。
「ありがとうございます」
動じない瑠璃。
それど何処か、交戦的な笑み。
秀吉は渋い顔で黙っていた。
その日のウチに美弥は城下へ行き新しい反物を仕入れてきた。
秀吉がその荷を持って帰って来る。
跳ねるように上機嫌で歩く瑠璃。
それを天主の廻り縁から見ていた信長は頬を緩めた。が
「ん?」
(あの娘、待っておったか)
信長は緋色の瞳に、美弥に駆け寄ってゆく藤隆姫の姿をジッと映した。