第35章 嵐 顕現
夕刻、政宗以外の全員が集まった天主、
そこに瑠璃も呼ばれた。
「玉瑛、わざわざ悪いな」
秀吉が労うのは何かを切り出そうと思っているからだ。
「いえ」
微妙な雰囲気を敏感に察したのか、
短く答えた瑠璃。
「玉瑛、今日、何かあったか」
信長が問う。
「今日ですか?何か…って、何もありませんでした」
不思議そうにしながらも、淀みの無い発声。
無駄な仕草もみせない。
背筋を伸ばし、美しく座っている。
それっきり信長は黙った。
代わりに秀吉が問う。
「美弥に会ったか?」
「出掛けに、門付近でお会いしました」
「何を話したの?」
家康が口を挟んだ。
「美弥さんが声を掛けてくださって、
縫い物の進み具合とか、気分転換にここにいるのだとか…他愛のない話をして、別れました」
(縫い物の進み具合か、縫ってることは知ってたんだ)