第35章 嵐 顕現
本来なら、
いつもなら、
1番初めに瑠璃を庇うはずの政宗は、黙ったまま、何も言わない。
藤隆姫がどんなに言っても、城での瑠璃は玉瑛なのだ。
城内には、瑠璃は全く姿を見せない。
それなのに、今日に限って瑠璃が瑠璃の姿でいるとは考え難い。
そこに居る誰もがそう思った。
「藤隆姫、本当に瑠璃だったと言えるか?」
秀吉が冷静に問う。
「瑠璃殿の着物の柄と背格好でした」
藤隆姫はっきりと答えるが、不確かだ。
「顔を見たわけじゃないんだな」
「顔は…見てません……でもっ!」
「でも、はいらない。
着物の柄だけで疑うことは出来ない」
秀吉が下した判断。
「俺が後で直接瑠璃に問う。
いいな」
藤隆姫はぐっっと詰まった。
「………はい……」
政宗は最後まで何も言わなかった。
(政宗さん、本当に、全部に無関心を装うんですか…?)
家康は沸々とした怒りを腹に抱えながら、
藤隆姫と歩いてゆく政宗を斜視した。