第35章 嵐 顕現
「確証も証拠もないものに絶対なんて言うもんじゃない」
一方的に独り騒ぐ藤隆姫を秀吉が嗜める。
すると、藤隆姫は縋り付くように政宗を見上げ、訴え始めた。
「だって、本当なんですよっ、兄様っ!
瑠璃殿がっ「やめて‼︎」」
藤隆姫の声を美弥が遮った。
「本当かどうかも分からないのに、
瑠璃さんを疑わないで!」
美弥が耳を塞いでいる。
「……申し訳ありません…」
美弥の辛そうな顔に、さすがの藤隆姫も素直に謝った。
「そうだな。
犯人は誰か、より、コレをどうするかの方が先だ」
秀吉は弱り顔で切り裂かれた着物を見た。
取り乱していた美弥が顔をあげると、
藤隆姫を真っ直ぐに見た。
「…藤隆姫…
少なくとも、私の知っている瑠璃さんは、
理由もなく、もし理由があっても、
こんな事をする人ではありません」
静かに、それでも、揺るぎない声音で美弥が言い切った。
瑠璃は、羨望の対象であり、友達だと思っている美弥。
瑠璃を根拠なく悪く言われる事を、良しとせず、耐える事が出来なかった。