第35章 嵐 顕現
美弥は口元を両手で覆い、
大きな眼に涙を一杯に溜めた。
(どうして…誰が…)
身動きすら出来なくて立ち尽くしていると
「美弥様?」
声がして、美弥はゆっくりと振り返った。
「誰か‼︎‼︎」
藤隆姫の大声を聞いて駆け付けた秀吉、家康、政宗。
「ひでぇな」
「コレ、頼まれてた仕事だな?」
秀吉が美弥の肩を摩る。
美弥が頼まれ仕立てていた着物。
衣紋掛けには、袖が肩から引き離され、
身ごろは全部 切り裂かれている着物が掛かっている。
「酷い…」
藤隆姫も悲痛の声を漏らした。
「誰がこんな事」
政宗の言葉に藤隆姫が飛びつくように反応した。
「瑠璃殿ですっ!私、見たんですの」
「は?アンタ、何、根も葉もない事言ってんの」
家康が静かな怒りを見せる。
「本当ですっ、私、見たのっ。
瑠璃殿が美弥様の部屋から出て来るのを!
あの着物、絶対、瑠璃殿よ!」
藤隆姫が捲し立てた。