第34章 書庫での哀苛(R18)
「いいえ、俺はなにも」
無関心無関係な態度。
「何もしていないのに、コイツが泣く事があるのか」
「泣く様なことは何も」
「では何をした」
「それは……」
「はっきり申せ」
攻める信長に
「抱いただけです」
観念したのか、開き直ったのか、
臆面もなくキッパリと言い切った。
「ほぉ、そうか。
瑠璃よ。
政宗に抱かれるのが嫌だったのか?ククク」
自分の腕の中の瑠璃を覗き込んで、愉快そうに問う。
面白がっているとしか思えない。
そんな分かり難い信長の優しさ。
「………」
「そうなのか?」
政宗が問うが
「………」
瑠璃は肯定も否定もせず黙否で顔を背けた。
「政宗、貴様はあの姫の子守りで忙しかろう。
瑠璃に構うでない」
「ッッ…」
政宗が表情を歪めた。
「それで良いな瑠璃」
「……」
「瑠璃は貴様とは口も利きたくないらしい」
信長は煽れるだけ政宗を煽る。
「ああ、そうかよっ!」
感情を消していた政宗が再び憤怒をぶち撒けた。
書庫を出た時と同じ台詞を残して、
政宗はその場を去った。