第34章 書庫での哀苛(R18)
瑠璃は無意識に信長の胸に顔を埋める様にして、目を瞑って耐えていた。
「泣かぬのか」
「……泣いてますよ…」
「心の中で、か。
ややこしくて不器用にも程がある」
信長が瑠璃の頭をそっと撫でた。
「信長様がややこしくした…」
「文句を言えるのか。
心配は要らぬな。クク」
(やっと、俺にも気を許したと見える)
瑠璃の言葉ひとつに、
信長、密かにご満悦だった。
瑠璃は無理矢理みたいに抱かれたことが嫌だったのではない。
心が見えない、
心が伴わないのに抱かれた事が嫌だった。
何を考えているのか判らない…
だから悲しかった。
瑠璃の怒りは悲しみで、
政宗の怒りは怒りだった。
近くに居るのに、とても遠かった。